
新時代の個客視点:店長として、リーダーとして、そして一販売員として
新時代の個客視点:店長として、リーダーとして、そして一販売員として
私は店長としてマネジメントを行う身ですが、ひとりの販売員として大きな喜びを感じることのひとつに、やはり私に会いに来てくださる「個客」さまの存在があります。「顧客」ではなく「個客」と書くのは、私が所属するビームスがそうしているということもありますが、それ以上に「私のお客様」という雰囲気が好きだからです。
人と対面せず、家にいながら様々なサービスが受けられる時代の中で、インスタントではないパーソナルな温かみを感じる個客さまとの繋がりは、私にとってかけがえのないものです。今回の記事では、そんな個客さまとの関係性の変化から見えてきた、店長としてのリーダーシップやスタッフ育成のヒントについてお伝えします。
「個客さまの言葉に、時代の変化を思う」二十年以上服屋を続けていると、「個客さまとの関係性の変化」を肌で感じます。最近私に会いにきてくださるようになった個客さまから、販売員冥利に尽きるお言葉を頂戴しました。 「前回来店時、武島店長にご提案頂いた服がとてもよく、それ以来アプリのスタイリングをチェックしていました。大人カジュアルというコンセプトが自分にしっくりときています。専属スタイリストさんになって頂いている感覚です。(中略)自分では普段選ばない物、手が出しにくい物でも、コーディネートを教えてくださるので、新発見もあり、買い物が楽しくなっています。(中略)もう他のお店では洋服を買えないかもしれません。それくらい、ご提案頂いた商品が良く、満足しています。(中略)いつもアプリのスタイリングを拝見しているので、今後も参考にしていきたいと思います。」 私と同年代のご夫婦の個客さまです。初めて応対させていただいた日、旦那さまが「あの店員さんオシャレだね、あの人に接客してもらおうよ。そう妻と話していて、店員さんの接客が終わるのを待っていたんです」と仰ってくださいました。 お話が盛り上がり、ご満足いただけたのですが、その時個客さまの方から、「武島さんをフォローするやり方ってどうするんでしたっけ?」と仰ってくださり、ご案内をさせていただきました。私がアプリに毎日欠かさずスタイリングを投稿しているのですが、2度目のご来店時、個客さまは私のスタイリング記事を参考にしたお召し物でいらっしゃったのです。 「この間武島さんがアプリにUPしていたスタイリングを真似してみたんですけど、どうですか?」と、個客さまは笑って話してくださいました。 |
頂戴したお言葉から推察するに、お客様は店頭でのお話だけに留まらず、 アプリでも私を身近に感じてくださっていたのだと思います。
私のスタイリングテーマは「大人だから出来るカジュアル」というもので、 SNSの自己紹介文にも記載しているのですが、そちらも目を通して頂き、共感してくださったのでしょう。
私は同年代の方が目にとめて頂きやすい時間に、毎日決まって記事をUPしています。 お客様がその時間を楽しみのひとつとして頂いているのであれば、これほど嬉しいことはありません。 オンラインでも私たち売場のスタッフが個性を発揮し、ファンを増やしていく為のアクションを仕掛けることは、 改めて大切なことだと知らされました。
売場だけでなくオンライン上でもスタッフが主役となり、個客さまとの個の繋がりが生まれる。10年前、いやほんの5年前でも、こういった接点はなかったように思います。オンラインでも「私のお客様」=「個客」との接点を持つのが当たり前の時代になったと言えるのではないでしょうか。この事実は、研修や育成プログラムを考える上で、非常に重要な視点となります。
「生活の潤い」
個客さまのお言葉の中で、もうひとつ心に響いたのが、「生活に潤いが出た」というお話でした。
たくさんの物に囲まれ、それが豊かさの象徴でもあった「having」の時代から、気持ちの充足や体験に価値を感じる「being」の時代に変わってきた。洋服を買って満ち足りるだけでなく、オシャレをすることによって生活や気持ちに潤いが生まれることに、個客さまは喜びを得ているのです。
ファッションを楽しむことは心を豊かにしてくれます。そう考えると、単に組み合わせの提案をするだけでなく、個客さまの人生に彩りを添えるお手伝いをしたいというマインドを持って接客できることが、これからの販売員に必要な資質であるように感じます。このマインドは、店長としてスタッフを育成する上でも、最も大切にすべき部分です。
リーダーとして、常に学び続ける姿勢を
ベテラン販売員と呼ばれるようになって久しいですが、今回ご紹介した個客様が教えてくださったように、 いくつになっても新しい発見が売場にはたくさんあります。
発見の数だけ私は販売員としてまだまだ成長していけるのです。
店長も売場に出ればひとりの販売員。
その姿勢を示すことは、店長として大切な振る舞いであり、物言わぬリーダーシップだと思っています。