
~「お客様に選ばれ続ける体験を提供する」ために~ 信頼される接客の土台を再構築する
ワンスアラウンド株式会社 ニューバランス玉川髙島屋S・C店 店長 佐古田 咲人 | ![]() |
現場マガジン【vol.225】
皆様、こんにちは。ワンスアラウンド株式会社 ニューバランス玉川店店長、佐古田咲人です。
入社から今年で10年という月日が経とうとしています。
一年目に配属されたビームスでは、右も左も分からない状況の中、アパレルの仕事の基礎や、社会人としてのベーシックマナーを一から徹底的に教えていただきました。
今の自分があるのは、温かい環境で育てていただいたからこそだと、心から感謝しています。
2年目からはニューバランスに配属され、2025年7月より玉川店の店長として着任いたしました。
着任後、店舗の指標を分析する中で、昨年に比べてMSP(ミステリーショッパー)のスコアが低下していることに気づきました。
当時の玉川店はMSP80.5点(Official26店舗中17位)という状況であり、スタッフ間でのベーシックサービスの提供にばらつきがあり、お客様へ一貫した体験価値をお届けできていないという課題が浮き彫りになりました。
「お客様に選ばれ続ける体験を提供する」というビジョンを掲げながら、足元の基本が揺らいでいる。
この違和感こそが、私の玉川店での出発点でした。
かつてのスタッフ達は「いいシューズを揃え、綺麗にディスプレイし、お声がけを待つ」という、どこか受け身の姿勢を持っていたのかもしれません。
自分たちの接客の土台にある常識を一度すべて疑い、再構築することから始めました。
■接客の核(土台)を整える改善の第一歩として、まずは接客の核である「シューズフィッティングのレベル統一」に着手しました。 お客様の足を正しく計測し、一人ひとりにぴったりのサイズをご提案できているか。 そのチェック方法やサイズ確認のプロセスにスタッフ間でばらつきがあったため、まず社員に対しては正しいフィッティングのやり方・サイズ確認の方法を個別に丁寧にすり合わせを行いました。 その後、アルバイトスタッフとは社員がマンツーマンで実際にフィッティングの練習を重ね、さらに私自身がフィッティングを行っている様子を動画で記録し、アルバイトスタッフに見てもらうことで、感覚に頼らず誰が対応しても同じレベルでご案内できるようにしました。 進める中で、これまでのやり方が大きく変わることへの抵抗も少なからずありました。「そこまで丁寧にやる必要があるのか」という声もあったと思います。 それでも、「シューズフィッティングという体験を通して、お客様に玉川店を選んでいただき、最高のサービスを届けたい」という“なぜやるのか”を全員で目線合わせしたことで、少しずつ方向性がまとまっていきました。確かな技術に沿った提案こそが、お客様からの信頼の土台になると感じていたからです。 ■迎え入れを徹底する技術の土台固めと並行して取り組んだのが、「迎え入れ(入店時の気づき)」の徹底です。 当時のMSPレポートや日々のミーティングでは、「お客様に気づくのが遅れている」 「スタッフが作業に追われ、視線が下がっている」という課題が幾度となく挙がっていました。 実際にNPS(ネットプロモーションスコア)の迎え入れ項目やMSPの点数を見ても、この項目で減点されているケースが目立っていました。 原因を掘り下げると、レジ周りの作業に追われてスタッフが固まってしまい、店頭側に人がいない状態になっていたこと、また入口手前がアパレルエリアのため、お客様の動きがシューズ側からの視界に入りにくく、シューズ寄りのフォーメーションになっていたことが見えてきました。加えて、玉川高島屋という落ち着いた環境で「丁寧な接客を受けたい」というお客様像がスタッフの固定観念としてあり、大きな声で明るく挨拶すること自体への抵抗も感じられました。 「多忙な業務の中で、全力を尽くしているのに何がいけないのか」といった葛藤がスタッフの中に渦巻いたこともあります。 何度言葉で伝えても定着しない部分や、そもそも声を出すこと自体が苦手なスタッフも多かったため、まずは自分自身がお手本となって、お客様の目を見て挨拶をする姿を見せ続けることから始めました。声の大きさや表情(笑顔)についても感覚に頼らず、店会議の中で実際に練習して基準をすり合わせ、さらに「お客様から挨拶を返していただけたかどうか」を一つの達成レベルとして設定しました。 「挨拶を返してもらえました」という一つひとつの成功体験が、スタッフのモチベーションにもつながっていったと感じています。 「お客様を一人にさせない」 そのために、店舗では次の2つのルールを徹底することにしました。
■ルーティンを日々積み重ねる私たちが決めたルールは、2つのシンプルなアクションです。 ★店前に必ず1名を配置し、動的待機を行うこと。 ★混雑時以外のレジ周りは1名体制とし、接客中であっても通りかかるお客様へ顔を上げる意識を持つこと。 最初は、「お客様がいない時に店先に立つのは気恥ずかしい」「バックヤードの作業が進まない」といった戸惑いの声もありました。 それでも全員で声を掛け合い、誰よりも私自身が率先して店前に立つようにしました。 その姿勢は着実なスコア改善へと結びつきました。かつて80.5点だったMSPスコアは、最終的に89.1点(Official29店舗中6位)まで大きく向上しました。さらに、お客様からのリアルな声を形にするハッピーレポートにおいても、年間目標150件に対し114件を投稿でき、スタッフの取り組みがNPSアワードのグランプリや準グランプリに選出されるなど、確かな成果となって評価してもらえました。 店に入ってきたお客様と視線が合い、表情が和らぐ瞬間。挨拶に笑顔で返してくださるお客様の姿。その一つひとつのリアクションが、数値としても証明できています。 ■ワンチームで連携しサービスを創り上げる玉川店では、毎月の店会議でのMSPスコアやNPSの共有、毎週のLINEグループでのKPI共有、そして社員MTGでの次週へのアクション決定がルーティン化しています。 成功した事例だけでなく、「なぜあの時、あの接客がうまくいかなかったのか」という課題も、全員で共有し合います。個々のレベルに依存する集まりだった私たちが、今ではフロア全体の動きを互いに確認し合い、一丸となって連携できるチームへと進化しました。 ■若いスタッフのモチベーションを引き出す特にZ世代といわれる若いスタッフのマネジメントについてどうしているのか聞かれることがありますが、何か特別の工夫というよりも、まずは常に楽しく前向きに取り組みたいという自分自身の性格によるところが大きいかなと思っています。 ただ、スタッフからネガティブな発言が出た時には、「〇〇さんならできるよ」と気持ちを切り替えられるような声かけを意識しています。 また、何かを任せるときは「信頼して任せている」ということを言葉にして伝える。フィードバックの際も、指摘よりもまずはできていたことをその場で具体的に褒める。一方で褒めるだけでは成長につながらないので、指摘すべきことはその場でしっかり伝えることも意識しています。 また、自分で考えて動いてくれたことに対しては、まず「やってくれてありがとう」という感謝を伝えることにしています。 また、冗談を交えながら話せる関係づくりや、日々のちょっとした雑談も大切にしています。 さらに、朝出勤してきた時に名前を添えて挨拶をする、ちょっとした変化に気づいて声をかける、などそうした日常の積み重ねが、信頼関係の土台になると感じています。
■自らの経験とそこから学んだこと自分のことを振り返ると、入社1年目は数え切れないほど寝坊を繰り返し、上司にひどく怒られていましたが、あるタイミングを境に、仕事に対する気持ちがしっかり入り、寝坊もしなくなりました。 なぜ変われたのか、自分でも明確な理由はよく分かっていませんが、ただ振り返って感じるのは、「誰と関わるか」が非常に重要だということです。当時、自分のことを見捨てずにサポートしてくれた上司がいたからこそ、少しずつ自分の中に責任感が芽生えていったのだと思います。 この経験がマネジメントに活きているとすれば、「スタッフを見捨てない」という姿勢です。 「あのスタッフは駄目だから」と見放してしまうと、その空気は他のスタッフにも伝わってしまいます。行き詰まっていそうだ、最近失敗が多いな、といった些細な変化に気づき、声をかけて話を聞く。 時には二人でじっくり話す時間を取り、時にはそっと見守る。状況によって関わり方を判断しながら向き合い続けることが、ここ数年のマネジメントで特に役立っていると感じています。 自分自身がしてもらってきたことを、今度は下のスタッフに返しているのかもしれません。 |
■さいごに
私たちが日々行っていることは、決して特別な事ではありません。
しかし、単に商品を販売する場所ではなく、「あのスタッフに会いに行こう」「○○店で購入して良かった」と思っていただける場所になるためには、正しいサービス体験と、日々のルーティンの継続こそが不可欠だと信じています。
ぜひ、みなさんも今の玉川店のサービスを体感しにいらしてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
これからも現場をリードするスタッフの得意(拘り)を
ご紹介してまいります。




