輝く店舗の舞台裏

~危機的状況から「さすが!」と言われる店へ~ 現場の再生は「心のケア」からはじまる

ワンスアラウンド株式会社

リテイル事業部 部長

        菰池 徹

現場マガジン【vol.222】

ワンスアラウンドの『現場マガジン』をご覧の皆様、いつもお読みいただきありがとうございます。

ワンスアラウンド株式会社の菰池徹です。

入社18年目となり、アパレルから飲食業態まで様々なブランドを経験し、現在はリテイル事業部長をやっております。

今回のテーマは、店舗運営において誰もが一度は直面する「店舗の活性化と再生」についてです。

店舗の売上が伸び悩む、あるいは現場の雰囲気がどこか停滞しているとき、私たちはつい「商品力」や「立地」といった外的な要因に目を向けがちです。しかし、数多くの現場を預かってきた私たちの経験から言えるのは、店舗が停滞する要因、そしてそれを打開する最大の鍵は、常に「人」、そして現場を率いる「リーダーシップ」にあるということです。

今回は、一時はスタッフの大量離職という深刻な危機に瀕しながらも、新たなリーダーの着任によって見事に息を吹き返し、現在はさらなる高みを目指して進化を続けている店舗再生の事例をご紹介します。

ご一読いただき、皆様の現場を元気にするヒントになれば幸いです。

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■ある店が直面した最大の危機

他社から移管されてスタートした当時、この店では、スタッフの度重なる早退や突然の欠勤などが相次ぎ、本来あるべき万全の営業体制が構築できない状態が続いていました。その根底にあったのは、スタッフ一人ひとりのメンタル面における課題の深刻化でした。

移管しても拭えなかった本部への不満や環境への不安、業務のプレッシャーなどが重なり、現場の空気は沈み、スタッフの心は疲弊していました。

そして恐れていたことが現実となります。当時の店長が退職を決め、既存のスタッフは全員離職という、店舗運営の継続すら危ぶまれるほどの危機的状況に陥ってしまったのです。

店が回らない、スタッフの笑顔が消えている。このどん底の状況を打破するために、私たちが新たなリーダーとして白羽の矢を立てたのが、M店長でした。

Mさんは、リテイル本部のES担当ディレクターを務め、過去には店長職や複数店舗のマネジメント経験を積んできた、現場マネジメントのプロフェッショナルです。さらに特筆すべきは、彼女が「心理カウンセラー」の資格を保有しているということでした。

私たちがM店長に託したミッションは、単に「売上を上げること」ではなく、傷つき、疲弊した現場を立て直し、スタッフが心からリラックスして働ける「安心できる店作り」を実現すること。そして、お預かりしている「ブランドの価値」を上げること、それこそが、店舗再生のための絶対条件だったのです。

■店舗再生:ステップ1
 心のケアと体制の再構築 ~安心の土台づくり~

移管オープンから4ヶ月後、M店長はまさに嵐のような状況の中に飛び込みました。

既存スタッフが全員いなくなり、残ったスタッフは入社してまだ1カ月のメンバーのみ。M店長も初めてのブランドで、商品知識やオペレーションを覚えるところからでしたので、文字通り一から全てを構築しなければならない状況からのスタートでした。

着任当初、彼女がまず徹底して取り組んだのは、崩壊しかけていた人員体制の再構築にむけたスタッフの「心のケア」でした。

M店長は、心理カウンセラーとしての知見をフルに活かし、スタッフの個別面談を徹底して行いました。「今、どんなことに不安を感じている?」「どうすれば働きやすくなる?」指示や命令ではなく、まずは相手の言葉を徹底的に「聴く」ことにより、スタッフの中にあった不安感を少しずつ解消し、現場に「M店長の元で頑張ろう」という心理的安全性を植え付けていったのです。

同時に年齢や経験に囚われず、人柄を重視した採用を進めました。

ここで重要だったのは、採用した後のフォローです。M店長は、派遣スタッフの契約延長を打診する際にも、彼女らのメンタル面や家庭の事情に配慮したきめ細やかな個別面談を継続しました。さらに、新人教育においては「見て覚えろ」ではなく、店舗運営に必要な知識やレクチャーを徹底。全体の課題については、店会議で対策を検討・決定するなど、誰もが迷わずに動ける仕組みを整えることで、新人スタッフの早期戦力化と定着を成し遂げたのです。

■店舗再生:ステップ2
環境改善と攻めの数値管理 ~売上改善へのシフト~

人員体制が安定し、スタッフの顔つきに明るさが戻ってきた段階で、M店長は、いよいよ店舗運営の正常化と売上改善という「攻め」の施策へと舵を切ります

まず着手したのは、営業時間の変更でした。体制の不備から短縮を余儀なくされていた営業時間を、本来の21時閉店に戻す調整を行いました。

これは「いつでも万全の体制でお客様を迎えられる」という、店舗運営体制の復活宣言であり、ブランド、施設からも短期間での立て直しを評価いただきました。

次に実施したのが、店舗の物理的環境、つまり「見え方」の改善です。当時の店は、外から店内の様子が見えにくく、お客様が入りづらいという課題を抱えていました。そこでM店長は、ガラス面に貼られていたシートをブランド本部と相談して剥がし、2箇所あった入口のうち、閉鎖していた片側の入口を開放したのです。

「お店の中の楽しそうな雰囲気を、外を歩くお客様にそのまま見てもらおう」というこの視認性の向上施策は見事に的中しました。店内の見通しが良くなったことで、入店客数が増加し売上に繋がったのです。

さらに、M店長は数値管理の強化を推進しました。

特に注力したのが、多く来店されるインバウンドのお客様に対する「プラスワン提案」です。インバウンドに人気の耐風性、圧倒的な軽さを誇る商材を強化し「傘をもう一本いかがですか?」といった具体的なアプローチを語学が得意なスタッフ中心に英語で使えるよう教育し、店舗全体の販売力を底上げしていったのです。結果、就任後から直近まで8ヶ月間のインバウンドのセット率は2.1となり、インバウンド売上は前年比123%と伸長、全体売上も前年比108%と大幅にクリアしています。

■店舗再生:ステップ3 
視野を広げ、誇りを取り戻す ~帰属意識の向上~

M店長の素晴らしいところは、改革の目をこの店の中だけに留めなかった点にあります。

自店が安定してくると、彼女はスタッフたちの視野をさらに広げ、ブランドや会社への誇りを取り戻させるためのアプローチを始めました。

 

社内運動会に店スタッフを積極的に参加させ、さらにハッピーレポートの投稿も全スタッフが行うなど、自分たちがワンスアラウンドという会社の一員だと意識する瞬間を多くつくったのです。

 

かつては欠勤や離職など内なる問題に悩まされていたチームが、今では「店の目標をどう達成するか」を自主的に考える集団へと変貌を遂げました。

 

M店長は「一瞬の印象を、一生の信頼に変えるプロ集団」という店ビジョンを掲げ、「さすが!」と言われる店舗への進化を目指して今日も挑戦を続けています。

■さいごに

この店の再生事例を振り返ったとき、現場のリーダーがチームマネジメントにおいて最も優先すべき視点にあらためて気づかされます。

それは、「スタッフのESや安心感という土台がない場所に、売上向上や数値改善という成果はない」ということです。

  

売上が上がらないからといって、結果だけを求めていれば、この店の再生は決してありませんでした。まずリーダーが現場をよく観察し、スタッフの心に寄り添い、徹底的に話を聴いて安心できる環境を整えること。その安心感があって初めて、スタッフは「もっと売上を上げたい」「もっとお店を良くしたい」と主体的に数字や課題に向き合うことができるようになるのです。

 

もし今、「お店の空気がどんよりしている」「スタッフのモチベーションが上がらない」と感じているマネージャーやリーダーの方がいたら、改善方法や数字を追う前に、ぜひ一度、現場の声に耳を傾けてみて欲しいと思います。


最後までお読みいただきありがとうございました。
これからも現場をリードするスタッフの得意(拘り)を
ご紹介してまいります。

菰池 徹
菰池 徹
ワンスアラウンド株式会社 リテイル事業部 部長

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